『デンマークから持ち帰った酵母で焼く個性的なパンの理由』新カフェ店長インタビュー
今年の10月からcafe Kamejikanの新店長に就任したゆうりさん。
デンマーク仕込みのパンを中心にしたランチメニューが人気です。
今回、彼女がどうしてデンマークパンを焼いているのか、その経緯に興味が沸いてお話を聞いてみました。
●デンマークでの滞在経験について
デンマークに行ったきっかけを教えてもらえますか?
ワーキングホリデーに行くことを決めてから、国を調べていると、デンマークがその年から受け入れ始めたことを知り、「他の人が行っていない国なんて、おもしろそう」と、何の前知識もなく決めました。
具体的な目的があったのかと思ったら、結構適当だったんですね(笑)オーガニックファームで働いていたとのことですが、そこでの暮らしはどのようなものだったのでしょうか?
林檎農園を始めたばかりの老夫婦に私がお世話になったので、3人家族のように暮らしていました。とても田舎で、周りに何もない場所で、週に一度、車で50分の街に買い物に行く以外は、家で過ごしていました。
朝は、暖炉用の薪割りから始まり、昼間は、農園の仕事。日暮れから、家族で夕飯を一緒に作って食べる。夜は、1つの薪暖炉を囲んで、ワインを飲んだり、時々、月明かりを頼りに目の前の森を散歩したり。
”何もない”を豊かに過ごす暮らしは、今でも私の宝物です。
なんだか童話のような世界ですね。勝手にその様子が想像されてしまいます。暮らしの中で大変だったことはありますか?
農園の虫を食べてもらうために、鳥の巣箱を作ったり、受粉のために、蜂のケアをしたり、雑草を刈ったりと、無農薬で栽培するためには、思っていたいわゆる農業と関係なさそうなことが多く、オーガニックの作業量の多さを体感しました。
日本との文化の違いは感じましたか?
ほとんどのものは、自分たちで、直したり作ってしまうことに驚きました。
私がいたときは、納屋を解体して、作り直したり、家が寒いからと、家の壁を壊して断熱材を入れて、壁板を張って、ペンキを塗るなど、デンマークでは、自分で直すことが普通とのことでした。身の回りが手作りで、溢れていました。
デンマーク滞在で得たものは何ですか?
自然と共存することが、大切ということ。鳥や蜂、太陽、雨にも助けられて食べ物ができる。
食べものは、当たり前にあるものではなく、たくさんの労力をかけて作られている、ということを体感しました。
デンマークでの体験はいまの暮らしにどう影響しているのでしょう?
食べものに、とても感謝するようになりました。
何でも、すぐ買うのではなく、なるべく自分で作れるものは、作ります。周りに作れる人がいたら、そこから買います。器、カゴ、服、帽子、鞄、財布など、手作りのものを周りに置くと、自然とものを大切に使えます。
●食について
ところで、デンマークの人たちは普段なにを食べていますか
朝は、ミューズリー。昼は、ライ麦パンのオープンサンド。夜は、お肉とお芋。というのが、スタンダードです。私がお世話になった家族は、お肉をほとんど食べないので、夕飯は、野菜のグリルなどでした。
今カフェで提供しているパンはとても個性的ですが、デンマークのパンとはどのようなものでしょうか?
それぞれの家庭によって、違うレシピでライ麦粉を使ったパンを焼いています。
どの家庭にも共通しているのが、ライ麦粉を使うということです。
デンマークパンの良さとは何ですか?
パンだけを食べるのではなく、日本でいう、「ごはん」のように、お魚や、お野菜など、「おかず」と一緒に食べることです。「漬けもの」文化の国なので、ニシンの酢漬けや、ビーツなど野菜のピクルス、チーズなどと一緒に食べていました。ずっしりしているので、満腹感が小麦粉のパンと違います。日本のライ麦粉で作ってみたら、甘みがあり、噛めば噛むほど、味わい深い、まるで玄米ごはんを食べているようなパンになりました。
漬物文化がデンマークにもあるんですね。とても意外に感じました。
●cafe kamejikanの店長になるまで
今回亀時間で働くことになった訳ですが、それまでの流れを教えてください。
鎌倉treepという自然食材を扱うお店がやっているカフェ(現在は閉店)で、店長をしていました。
子どもが産まれてからは、今まで以上に安全安心な食を心がける料理を追求していました。「おやつの甘味は、甘酒で作ってみよう」が、「甘酒も作ってみよう」になり、さらには「甘酒のもとになる米麹も作ろう」とやっているうちに、いつの間にか、発酵にハマり、自分で酵母を起こしてパンを焼く程になって。いろいろ作り過ぎて、お菓子や、パンを配り歩いていたときに、友人が亀時間を紹介してくれ、カフェを担当させて頂くことになりました。
カフェで提供している食事はどのようなものですか?
デンマークで一番好きだったパンを焼いている知人からその酵母を分けてもらい、日本に持ち帰りました。それを継ぎ足しながら焼いているデンマークパンを中心部に、子どもに安心して食べてもらえるような、身体が喜ぶ料理を、丁寧に手をかけ、時間をかけて作っています。
貴重なお話をどうもありがとうございます。改めてゆうりさんの焼くパンをしっかりと噛みしめたくなりました(笑)。
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今年のカフェ営業は12月16日(土)・17日(日)まで。
来年は1月20日(土)から再開予定です。
是非一度、亀時間でしか食べられないパンの味を体験してくださいね。
デンマークパンとグラタンのランチ。
二年仕込みの自家製お味噌が効いたグラタンソース、ぜひお試しください。
<MASA>