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鎌倉の旅好き娘がメキシコでゲストハウスを開くまで

鎌倉のおてんば女子、ひろみちゃんは亀時間の近所で育ちました。
絵を書くことが好きだったので東京でデザインの仕事に就きますが、
大学時代のタイ旅行から旅人生に目覚めて、お金が貯まると長期で海外へ出かけるため、
その度に仕事も辞めながら4ヶ月のインド旅、その後アジア7ヶ月周遊(うち4ヶ月インド)へ。
旅の合間に亀時間にときどき遊びに来て、イベントでチャイを売ったりしてくれましたが、
最初に出会ったときから心が開かれていて根っからの旅人気質を感じました。

祖父母の体調が悪くなり一時帰国しましたが、その後2014年に旅を再開。
中南米を回り、メキシコでペンションアミーゴという有名な日本人宿にハマります。
そこで、飛行機を使わず陸路だけで6年半も世界を旅していた筋金入りの旅人、
元料理人のサトーさんと運命の出会いをしました。
彼は旅資金が残り50ドルとなり正規ルートでは帰れないため、
コンテナ船に潜り込んでの日本帰国を企んでいるところでした。
流石、旅の猛者はやろうとすることが半端ないですね。
ひろみちゃんは彼の優しさに触れて、私はこの人と結婚するだろうなとすぐに直観したそう。

一方でその頃、彼女の心の中では”人を集まる場所を自分で作りたい”という想いが膨らんでいました。
サトーさんは長旅を終えて、日本で慎ましく暮らそうかなと思っていたのに
ひろみちゃんはなんと、2人でメキシコで宿を作る計画に取り憑かれたのです。
彼女が一度決めたら、その決心は梃でも動きません。
2人は帰国して一緒に鎌倉の宿や雑貨店で10ヶ月働き、仕事を覚え、お金を貯め始めました。
その間、ひろみちゃんは毎日メキシコという言葉をボクシングのジャブのようにぶつけて、
じわじわと彼の気持ちを揺さぶっていきました。

ご両親を招いて入籍を報告したものの、宿開業資金を手っ取り早く貯めるため、
ひろみちゃんは婚姻届を出してわずか3日後!、
気合だけで単身オーストラリアへワーキングホリデーに出発。
英語はあまり上手ではなかったので沢山のトラブルが遭いながらも、ゲストハウスへの想いは変わらず、
1週間に一回、日本で働いているサトーさん宛に手紙を送り、その中で自分の宿の計画を熱く語り、
想像の宿見取り図を描き、旦那さんを説得(≒洗脳?!)し続けたそうです。
そして過度のストレスで白髪が増えて、血の出るような思いをしながらも
10ヶ月の滞在で無事に宿資金を貯めることに成功。

帰国後、彼女の熱意に心動かされたサトーさんも合意して2人はメキシコ行きを決めましたが、
一方でサトーさんのお父さんはその計画を全く知りませんでした。
知らないどころか、6年半振りに放蕩息子が帰ってきて、
いよいよ自分のやっている串焼き店を継いでくれるのかという期待で一杯だったそう。
山形の実家へ2人で行き、そんな親に向かって「メキシコで宿をやる」という青天の霹靂、
寝耳に水な話を打ち明けるという、胃が痛くなるような展開。

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まさに断腸の思いで計画を伝えると、驚いたご両親も最後には理解してくれました。
2017年、鎌倉でご両親を招き結婚式をあげたのち、
ついにメキシコに渡り、観光地を巡って宿の立地を検討開始。
そしてゴールデンルートと呼ばれるメキシコからグアテマラへ抜ける道の途中、
チアパス州のサンクリストバル・デ・ラス・カサスに白羽の矢が立ちました。
標高約2100mに位置し、昔ながらのマヤ文化と新しいメキシコ文化が交じりあっており、
活気のある市場があって、気候と治安が良くて、石畳が美しく町歩きが楽しいところなのだそう。

ペンションアレグレ6

ペンションアレグレ(3)
サンクリストバル・デ・ラス・カサスの町並み。

人気の土地での物件探しはとても苦労しましたが、足で稼ごうと毎日あちこち歩き回り、
「貸します」の看板を探し、内見を繰り返したのでした。
そして、運良く信頼できる大家さんと出会うとそれからはトントン拍子にことが運び、
2人で馬車馬のように働いてわずか3週間の突貫作業で準備を整えて、2017年11月4日に開業したのでした!

その名も「ペンション・アレグレ」。
アレグレとはスペイン語で明るい、嬉しい、楽しい、面白おかしい、幸せ、ご機嫌
などを意味し、すべての人が楽しく居心地良く健康に暮らせる空間を目指しています。
ひろみちゃんを知る方なら納得、まさに彼女の性格そのものを一言で表す言葉です。

Screenshot-2018-5-23 写真 ペンションアレグレ(3)
広い共有スペース。

Screenshot-2018-5-23-写真-中庭でのんびり過ごすこともできます。

ペンションアレグレ4
みんなでシェア夕飯。楽しそうです。

ペンションアレグレ5
美味しそうな朝食。

開業準備で無理をしたことががたたって、1ヶ月後にサトーさんは帯状疱疹、
ひろみちゃんはトビヒとヘルペスが出来てしまいましたが、
その後はペースを掴み、宿をすこしずつ整えながら毎日お客様を迎えているそうです。
開業から半年経ってひろみちゃんが一時帰国したので、今回のインタビューが実現した次第。

家族と遠く離れることの寂しさ、申し訳なさを感じながらも、自分の信じた道を突き進むひろみちゃん。
彼女の無鉄砲にも見える生き方を非常識だと切り捨てることは簡単ですが、
無難でよしとする閉塞した日本の状況を突破するようなエネルギーを清々しく、気持ち良く感じます。
話を聞いていて、一番強く感じたのは彼女の情熱の温度の高さ。
熱意は人を動かし、人生を切り開いて行くのだなと改めて思い知りました。

彼女の明るい性格とその裏で気配りも欠かさない細やかさ、
そしてひろみちゃんを優しく受け止めるサトーさんの深い深い愛があれば、
宿はきっと上手く行くだろうと確信しました。

僕はまだメキシコに行ったことがないのですが、
話を聞いていたら今すぐにでも行きたくなってきました。
プロの料理人だったサトーさんの美味しいご飯も食べてみたいし、6年半の旅話にも興味津々です。
皆さんも是非、メキシコを訪れた際にはペンションアレグレにも立ち寄ってくださいね。

●ペンションアレグレ
http://pensionalegre.site/

<MASA>

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