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想いは世代を越えて~ご近所さんからの頂き物~

亀時間の建つ鎌倉の材木座には古くからの家屋が残っていますが、時代の流れと共に減少傾向にあります。
和の家屋で使われていた調度品は、新しい現代家屋には居場所がありません。
捨てるのも勿体無い。そういえば近所に古民家の宿があるから、そこなら引き取るかもしれない。
そんな風に白羽の矢が当たり、9年間亀時間を営む中で少なくない数の品々を譲り受けてきました。

つい2週間程前、晴れた日の午後。
銀髪の聡明な印象の女性がふらりと亀時間に現れました。
材木座に50年住んできたのですが引っ越すことになったので、おばあさまから譲り受けた所有品を譲りたいとのこと。
後日訪問して、上等な簾や掛け軸などを有難く頂戴してきました。明治15年生まれのおばあさまは、他にもべっ甲の髪飾り、携帯書道セット、携帯裁縫道具入れ、竹製の定規など時代を感じる逸品を残していました。

奥様から話を伺っていると、ご夫婦はその昔、ニュージーランドの湖畔で宿を3年間経営されたことがあり、懐かしそうに思い出話を聞かせてくれました。嵐で木が倒れて、道路が分断されて町から外に出られなくなったときのこと。一刻も早く復旧作業をして欲しいと困っていたら、町の住民は道路でパーティを始めて、カルチャーショックを受けたそう。今を楽しむことにかけて、ニュージーランド人は一枚上手でした。

3年前にいただいた高級布団も、持ち主の逸話が印象に残っています。
亀時間からほど近い家の整理にやってきた都内在住の女性からお声がけいただき、二階建ての広いお宅を訪問。
1人暮らしだったお母さまが亡くなられたので、不要になった布団一式を使わないかと仰って下さいました。
そのお母さまは、もてなし好きで、今で言うところの民泊をしたいという夢があったそう。
英語が堪能だった訳でもなかったようですが、材木座の海で散歩中に、外国人を見つけると声がけしては家に招いていたそうです。
家の造りも階段が二つあり、上等な布団を余分に用意して、いつでも開業できるようにしていました。
残念ながら、お母さまの夢は実現することなく終わりましたが、そのお布団はお母さまの気持ちを実現するかのように、現在亀時間で使われています。

大切にされた物は、持ち主の意志が宿っています。
その意志が次の持ち主を見つけて、新しい場所で価値を保ち続けるのだと気付きました。
亀時間の建物も今は亡き大家のおばあさんが語ってくれた、この場所での思い出や建物を大切にする思いと共にあります。
9年の間に頂き物も増えて、それら総体の見えない力によって亀時間が生かされているように感じます。

身体は朽ちるとも、想いは世代を越えて繋がっていく。
人生も、昔を生きた誰かの想いによって少しずつ形作られて、方向付けられているのかもしれません。
先を行く先輩たちからバトンを受け取るたびに、僕たちは太古より連綿と続いてきた命の流れの一つであることを思い起こします。
それは普段忘れがちですが、大事な事実だと思いませんか?

<MASA>

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