鎌倉の景観を守る人々 景観づくり賞の授賞式報告
昨日3月16日、穏やかな晴天の中、鎌倉市第五回景観づくり賞の授賞式が
御成小学校にて開催され、松尾市長から受賞した5件の代表者に
直々に賞状が授与されました。
表彰とは縁遠い人生でしたが、目の前で市長に表彰状が読み上げられると、
沢山の人たちに応援してもらって現在があることを思い出すと同時に、
鎌倉に自分たちの活動が認められたようで誇らしい気持ちになり、
ジワッと感動が込み上げてきました。
景観づくりの重要性についての基調講演を東京大学大学院准教授、
窪田亜矢先生が行ったあとは受賞者を交えてのパネル・ディスカッション。
受賞者それぞれが建物や景観を維持する上での苦労などが語られましたが、
その内容は禅宗文化の街、古都である鎌倉らしいものでした。
浄智寺境内
「山ノ内浄智寺奥の路沿いの景観」で受賞された鎌倉五山の第四位、
浄智寺のご住職は、寺の創建から700年以上を経て、
時代とともに自然の姿も移り変わっているので、
過去のどの状態を基準にして景観を維持すべきかを考えながら、
若い庭師に庭の管理を任せることで技術の継承を促していること。
浄智寺と同じ谷戸に住処を構えた方々からは、京都の茶庭とは違う
「鎌倉の庭」をプロと一緒に追求して景観を維持していることや、
リフォームをしながらも竹垣は浄智寺と同じ組み方で統一するなど
の努力をされていること。東京のマンションに住んでいたが、
不便を承知で移住し手間をかける暮らしを満喫されていること
などが語られました。
小町の家々
「小町の家々」で受賞された家主の女性はお二人とも素敵な和装でいらっしゃり、
家に嫁いで50年の歴史を語られ、姑から家を維持する作法を教わったことや、
独り身となった今では障子を一人で30枚も毎年張り替えていること、
手を怪我しないように軍手をはめて立て付けの悪くなった雨戸を開閉していること、
維持が大変だから子供たちは受け継がないだろうが、
自分が生きているうちは大変でも家を守りたいとの決意を述べられていました。
比企谷幼稚園
妙本寺の麓にある比企谷幼稚園の園長さんは、
就任した15年前の当時は建物のガラス窓が補修されることなく
ダンボールで塞がれた箇所もあったのですが、
巨額の予算を組んで全部綺麗にして環境を整えたこと、
建物を維持するために園児集めに奔走されたことなどの苦労や、
東日本大震災で壊れた昭和12年製造の古時計を新品に
取り替えたら卒業生からクレームがあって、
東京の時計職人に頼んで修理してもらい、
今でも大事に使っていることなどのエピソードが語られました。
上記のとおり、長い年月の中で培われた鎌倉の景観というのは
それを大切に思う気持ちと沢山の手間と労力によって
維持されているということが実践されている方々の生の声により
浮かび上がってきました。
窪田先生からは、鎌倉は「歴史的風土」という概念の提示や
御谷騒動からの緑地保全活動などで、
日本でも先進的な街であるという嬉しい言葉もいただきました。
亀時間の建物は今年で88年とそれなりの歴史がありますが、
亀時間自体はまだ3年弱の若輩者です。
長年の努力を惜しまなかった立派な人々に混じらせていただき、
話を伺ってとても良い勉強になりました。
会場には自薦他薦を含めた132件全ての景観づくり賞候補建物や活動が
パネル展示してありましたが、実に鎌倉らしさを凝縮したような建物ばかりで、
どこが受賞してもおかしくないですし、これらの建物を可能な限り
維持していくことが鎌倉の景観を守る上で重要だと思います。
この多数の候補の中から亀時間が選ばれたという光栄を改めて感じ、
身を引き締めた次第です。身が引き締まって文章が硬くなったこと(笑)
お詫びいたします。
<MASA>