鎌倉の隣り、逗子に手造りビールの小さな醸造所が2012年11月1日誕生しました。
その名も「ヨロッコビール」。喜びの麦酒です。

ちょっと前まで、ビールといえば大手ビールメーカーの独占市場でしたが、
1994年に酒税法が規制緩和された結果、全国各地に地ビールメーカーが登場。
岩手の銀河高原ビールなど、この18年でご当地ビールが定着した感があります。
神奈川の湘南地域でも、茅ヶ崎の熊澤酒造や鎌倉ビールなどがオリジナルのビールを生産しています。

しかし、この「ヨロッコビール」はそのような地ビールメーカーより更に生産規模がもっと小さい
マイクロブルワリーと呼ばれるもの。直訳すれば極小醸造所。
極小の名の通り、現在働いているのは基本的にヨロッコビール代表の吉瀬さん一人で、
家族がちょっとお手伝いするくらい。本当に家内制手工業レベルです。
1回の仕込み量は100リットルで、月産1000リットルを目標にしているそう。


温度を一定に保つ部屋にて仕込まれている醸造タンク2基


瓶詰めも手作業です

この醸造所で取り扱っているのは、ビールの中でも上面発酵の「エール」という種類。
大手のビールは下面発酵のラガーが中心なので、ビールと言えばラガーの味を思い浮かべる
人も多いでしょう。正直なところ、僕にはメーカーによる味の違いがあまり分かりません。

イギリス、チェコ、ベルギー、ドイツなどヨーロッパではビール文化が豊かなのですが、
本当に多様な味と個性があるのです。フルーツと一緒に醸造したり、スパイスを効かせたり、
アルコール度数がワイン並みだったり。
当然ヨーロッパの影響を受けているのかと思ったのですが聞いてびっくり、、
彼が直接影響を受けたのはアメリカなのでした。
と言っても、あの水のような味気ない某ビールではありません。

ここ20~30年で、アメリカ全土には400以上のマイクロブルワリーが誕生、
ブルーパブと呼ばれるレストラン併設の醸造所が1000店舗以上もあり、
クラフト(手造り)ビール革命とも呼ばれる大変面白い状況になっているのだそうです。
日本にはまだ数えるほどしかないそうですが、最近首都圏でも「ブルーパブ」が
静かな人気となってきています。

4年前まで飲食業界で働いていた吉瀬さんは、醸造所で働くことを検討していたのですが、
自分自身でビールを作るという冒険的な方針に切り替えて独学を開始。
2年前にマイクロブルワリーの本場、アメリカオレゴン州のポートランド市を訪ねます。
ポートランドは市内だけで30から40軒のマイクロブルワリーやブルーパブが立ち並び、
1ブロック毎にあるような状態になっているそうです。

夜になると自分のお気に入りのお店に立ち寄って一杯飲んだり、
個性を出しているお店ごとの味を飲み比べて楽しんだりしている人々の姿を目の当たりにしました。
地元の人々が自分たちの文化を自分たちで育てようという機運がポートランドにはあり、
大量生産、グローバル化の流れの真逆を行く、オルタナティブでDIY的な志向に、
自分たちの住む鎌倉・逗子エリアと近いものを感じたのでした。

現地で20店舗ほど訪問して飲み歩き、決意も新たに帰国して開業準備を開始します。
通常の食品製造は保健所の管轄なのですが、酒税の関係で醸造所の免許は国税庁管轄。
食品製造業とは段違いの難しさがある、醸造免許取得の難関を無事に乗り越えて、
ついに開業する運びとなりました。


ヨロッコビール代表の吉瀬さん

「ウンチクを語る人の多いワインと違って、ビールは気軽な存在なのに奥が深いところが面白いんです。
発酵文化というのは、日本で古来から育まれてきたもので、
かつては各家庭毎に酵母が住んでいるような状況だったと想像しています。
それが近代化・工業化の波の中で人々の手から離れ、
いつのまにか得体の知れないものになってしまいました。
ビールは日本古来の飲み物ではないのですが、
手造りの美味いものには日本人の心に訴えるものが多いにあると信じてます。」
と吉瀬さんは語ります。
結婚式、パーティなどおめでたい席で欠かせないお酒。
手造りのビールで人々に喜びを伝えたいとの意気込みを醸造所の名前に込めたそうです。

ヨロッコビールでは、5種類のビールを提供予定。
今回訪問した際、琥珀色が美しいペール・エールと試飲しましたが、
苦味が少なく旨みの強いフルーティな味わいは、日本人もきっと好きになる味だと確信しました。
加熱処理をしていないので、酵母が生きているというのが何より嬉しいです。
鎌倉の大町に畑を借りて、ホップも育てているそうです。
近い将来、鎌倉産のホップを使ったビールが飲める日が来るかもしれません。


醸造所の前にはホップの弦が伸びています

醸造所を構えた地は、元々こんにゃく屋さんの製造所でした。
こんにゃく販売は続けているものの、残念ながら製造は終了。
若い生産者への理解がある大家のこんにゃく屋さんに応援されながら、
その空いた空間を改装してビール醸造所と天然酵母パンの工房が
併設するB&B(Beer and Breadの略)となりました。パン屋さんの方は
過去のブログ「道草の道~材木座編~」でも紹介した鎌倉の野菜市場「農協連売所」内にある
『パラダイス・アレイ』の工房です。

日本でもここ数年酵母食品、発酵食品の文化が見直されてきています。
それは工場生産の対極にある、伝統文化を守ってきた小規模事業の店舗や、
家庭ごとの手作りの味の復権とも言えます。
多国籍企業によるグローバリゼーションが世界を席巻していますが、
そうなればなるほど、この醸造所のような個性溢れる個人のお店・仕事が注目されて、
大切にしようという流れが生まれるのも必然です。
この場所から新しいビール文化が地元に定着することを期待しています。

亀時間でもこのローカライゼーションの動きに共鳴し、
カフェ及びバーにてヨロッコビールの販売を開始します!

●YOROCCO BEER(ヨロッコビール)

神奈川県逗子市久木3-7-2
TEL&FAX 0468-74-4645
HP: http://www.yorocco-beer.com/

B&Bの場所はこちら

より大きな地図で ヨロッコビールとパラダイス・アレイ を表示